429号 発進塔:お盆

掲載日:2018年07月20日

西日本各地に甚大な被害をもたらした梅雨の季節も過ぎ、今は連日猛暑が続いている。そんな中、私は老骨に鞭打って初盆の準備に取り掛かっている。

今回はその「お盆」について少し述べてみたいと思う。といっても私は宗教や哲学に関して確たる識見がある訳でもないし、お寺の総代長を勤めているとはいえ、極めて我流な考え方をしている者であることをまず断っておく。

さてお盆は「盂蘭盆」ともいい、語源は古代インドのサンスクリット語のウルヴァンを漢字に音写したものである。ウルヴァンとは霊魂を意味し、それを祀る行事が農耕儀礼と共に中国に伝わり、それがやがて日本に伝来、斉明天皇が六世紀に斎を設けたのが初めてとされている。それがさらに儒教の祖霊崇拝と融合し、独自の宗教行事として長く受け継がれてきたものと考えられる。久しぶりに集まった家族が亡き人を偲び、語り合い、先祖の安らぎを念ずる営みである。

自恣(じし)

紀元前5世紀のインドの話になるが、インドでは3ヵ月に及ぶ雨期に入ると高温・多湿になり、草木は生い茂る。虫や蛇も出てくる。そこで僧侶は外での修行、すなわち托鉢をやめ、夫々に適当な場所を探し求めてそこに一定期間定住し、修行に専念したという。所謂「雨安居」(うあんご)と呼ばれるものである。そして雨期が終わった陰暦7月15日の満月の日には、お釈迦様を囲み、3ヵ月に及ぶ修行の日々を振り返り、その成果を報告したり、自身の言動に誤りがあれば、それを指摘してもらったり、さらには自身で気付いた過ちを懺悔し、再び過ちを繰り返さないと誓い合ったという。この集いは今日も続いている様である。自恣とは意のままに、思いのままに行動することであるが、仏教用語としては反省する、後悔する、あるいは懺悔するといった意味合いである。

この集いがそもそもお盆の始まりであったと思うのだが、諸説があり、安居の最中に釈迦十大弟子のひとり、目連尊者が亡くなった母親の姿を探すと餓鬼道に堕ちているのを見つけ、釈尊に実情を話して方法を問い、供養をしたという伝説に由来するという説、その他にも色々ある。

盂蘭盆会は陰暦の7月13日から16日にかけての迎え火・棚経・送り火・盆踊り等々の一連の行事のことである。盆踊りといえば、私もそれぞれ一度ずつ見学したのだが、四国の阿波踊りや山鹿灯籠踊り等が全国的に有名である。こういった大切な行事をアジアでは陰暦で行っている。日本では改暦により新暦(グレゴリオ暦)に合わせて8月15日前後に固定されている。

人の生きざま

最先端科学技術を駆使した「はやぶさ2号」で宇宙の始まりを解明しようとしている人々があるかと思うと、コンピュータやスマートフォンに依存しきった生活をしている人、スポーツや芸能・お笑い番組に熱中している人、混迷する国内外の政治状勢に翻弄されている人、株価の動向に気を揉んでいる人、無駄な忙しさに追い立てられている人、誰かの為に地道に何かをしている人等々様々である。お盆の期間ぐらいじっくり自分の生き様について考え直してみては如何だろうか。

ところで、はやぶさ2号の開発に関わった科学者達は、最善を尽くした後は、ただ神様・仏様に祈るだけと話していた。これを聞いて私は安堵した。医師は、総てがそういう訳ではないが、患者さんを看取ると自分の仕事はこれまで、とその場から一刻も早く逃れようとし、お坊さんを頼りにして来た。宗教や哲学に疎いからである。私の自恣の念である。

(追記)今回は、禅の友という小冊子を参考にしたことを申し添える。

一貫グループ会長
永野 義孝

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