422号 発進塔:譲葉の季節 Ⅱ

掲載日:2017年05月10日

新緑が美しい季節である。例年より2週間あまり遅く開花した桜も、すっかり葉桜になった。一貫グループでは長期の入院・入所生活をしている方々に潤いを与えようと人為的環境整備には特に配慮して、種々の樹木を植栽している。それも当初は高木では木犀や紅葉・欅(けやき)等を、低木ではさつきやつつじといった落葉樹を好んで植えていたが、いつの間にか榕樹(がじゅまる)や赤秀(あこう)・木斛(もっこく)・黐(もち)、それに南方系のフェニックスやロベレニー、さらにはアメリカ西海岸に多く樹齢千年以上といわれるセコイヤ等々の常緑樹が多くなった。理由は護岸用として近年波打ち際に無数のテトラポットが設置され、風が強い時にそれによって海水が砕けて霧状になって吹き付けるからである。葉肉が薄い落葉樹は、それに耐えられないのである。

昨今は、そういった樹木を含め、特に遠方に眺める里山の総てが美しく華やかに映えている。この光景を古代中国の郭煕は春夏秋冬の四季を描いた絵の中に「春山淡治而如笑」という詩を添えている。春の芽吹きはじめた華やかな山の形容としてである。季語の「山笑う」の起原になった一節であろうと考える。中国では古来、かように有名な山水画には、それを見て感激した詩人らが添書・落款(らっかん)しているものが多い。なおこの傾向は今日でも受け継がれている。

話が少し脇道に逸れてしまったが、この美しい光景は樹木から少し離れた所から眺めてのことである。若し、山や手入れが行き届いていない植込みに一歩足を踏み込むと、異なった情景に驚くはずである。地面には雑草が生い茂り、その上に枝幅いっぱいに分厚く散った落葉がある。

皆さんは落葉といえば、色鮮やかな紅葉や、それがやがて初冬に枯葉となって散る様を思い浮かべるであろう。然し春から初夏にかけて静かに散る葉っぱがあることに気づいている人は意外に少ないと思う。紅葉や落葉は落葉樹において見られる現象である。一方、常緑樹では落葉が春から初夏に観察される。いわゆる「譲り葉」である。代表的なものに交譲木(ゆずりは)というのがある。私の家にも植えてあるが、春に黄色味を帯びた若い葉が出た後に、それが育つまでは風や寒さから新芽を庇護し、その生長を確認したように自らの居場所を譲って散ってゆくのでそう呼ばれる。同じような現象は、枝から気根が垂れ下がる榕樹や赤秀、庭木としても広く植栽される黐の木や木斛などでもみられる。

樹木は新陳代謝を繰り返しながら成長する。組織もまたそうであろうし、そう持っていかねばならない。

余談

熊本からの帰路、上島の高規格道路にさしかかって間もなく、眠っていると思っていた隣席の家内が、「山笑う季節ですね」と声をかけた。私もしばらく眺めていたが、ふとこの原稿の提出を催促されていることを思い出した。これを題材にしようと決め、帰り着くとすぐ書いて提出した。

ところが、17年前に同じ表題で、しかも同じ主旨で書いていたことが判った。中身は前回のがいい。しかし、新たに書くのも面倒である。結局、表題に「Ⅱ」とだけ追加した。

一貫グループ会長
永野 義孝

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