415号 発進塔:時に中す

掲載日:2016年03月10日

一度述べたことがあるが、20年位前に私は当時の中国衛生部医政司の要請を受け、やがて来る中国の「少子高齢社会」に向け、今後どう戦略を立てるかという会議に参加したことがあった。日本では特例許可病床として療養病床が増え過ぎて、病床削減が論じられ始めた頃である。

驚いたことに、多くの参加者が日本の状況、取り分け高齢化が地方の郡部で先行して進んでいる事や、このままの政策を放置しておくと必ずや財政的に無理が生じるであろうことを指摘していた。

また、ある若い医師は自分達が参考にしたいのは、現在の日本の老人施策ではなく、江戸中期から昭和初期に存在していた、所謂「湯治場」であると発言していた。入院や入所を基本として考えるのではなく、家庭(ホームベッド)と定期的な湯治場の利用を組み合わせることで対応したい。普通の施設と比較して、湯治場的なものは多くの人がシェアでき、最低でも施設比10倍の効果があるという主旨であった。

介護は家庭の問題ではなく、社会全体で支え合うものとして、介護保険を導入したり、福祉目的税として消費税増税を行ったにも拘らず、福祉サービスの削減が続いている現状をみると、20年前に中国で論じられていた事柄が頭の中に浮かんでくる。今日の日本の政策の柱がまさに20年前の議論のようになりつつある。

在宅と通所及び短期入所の組み合わせである。介護保険導入時に政府が言っていたことと真逆であり、介護を家族に押し付けるような結果になっている。公的介護部門も大都市(近隣も含む)以外でそういった事業を行っている者は、いずれも中小零細業者で経営状態は良くない。統計によると50%以上が赤字のようである。

少し関連性があるものとして、CCRC(Continuing Care Retirement Communityの頭文字)について述べてみる。米国発で退職後の人達が地方に移り住み、健康で生き生きと生活すると共に、医療や福祉が必要な時に継続的なケアが受けられる地域づくりを目指したものである。うまく機能しているものも多く、世界中から視察も多いと承知している。

勿論これは大規模開発型で富裕層を対象として展開された。いち早くそれを導入しようとしたのが中国の地方政府であったが、日本でもそれを参考に、都会から地方への人の流れにしようと考えた。それが日本版CCRC構想であり、地方創生の目玉の一つとしている。

そこでは富裕層ではなく、ごく一般の層から低所得者までを対象にした小規模な開発で、田舎の空き家をも活用し、積極的に就労や地域社会活動にも参画してもらうことで活性化にも資すことを期待したものである。この背景には、ここ十年間で東京だけでも、75歳以上の後期高齢者が170万人以上の増加と見込まれている事もある。

なお東京以外でも大都市は同様の問題をかかえている。

実は私も20数年前から、自己流福祉ゾーン計画をゆっくりとした足取りで進めており、道半ばである。日本版CCRC案を読んでみると、私が進めて来たのとよく似ていると納得する所もある。傘で庇護されるべき歳になって、ゆっくりしたいと考えても、周りはなかなかそうさせてくれないと憂いたり、かといって、ああしたいこうしたいと踠いている。自分でも呆れるばかりである。そこで今、中国・四書のひとつ、中庸の「時と場に中す」という言葉をまるで念仏を唱えるようにかみしめ、そこから脱却しようと努めてはいる。

一貫グループ会長
永野 義孝

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